つい先週まで,服選びに凝っていた.スーツにはまったのである.本を何冊か買い求め,スーツの蘊蓄を学び,実際2着のスーツを揃えた.実はまだ仕事でも着ていないのだが,ワードローブの端に陣取っている.すごく綺麗な仕上がりの布地で,定価6万円の価値が光る服だ.それから数週間,ほかの服一般についてはまっていた.着こなしの本を以前妻から贈られたが,その本を眠る前に熟読し,ベーシックアイテムを揃えようと,季節の終わりに4着購入した.
この背景には,お金の使い道がないという実情がある.ほしいものがいよいよ少なくなり,お金の使い方に変化が訪れている.数日で月給分が上下する株式投資.お金の観念がすっかり変わってしまい,数千円も誤差に過ぎない感じになってきた.今回服を4着買っても結局2万円程度.一日の相場で変動する額のほうが大きく,減らない感覚になっている.お金が減らない.この状態の維持こそ,人生の余裕だと思うようにもなった.
話を戻す.洋服の着こなしに少し余裕を持つようになった.ベーシックとして紹介されているアイテムをそれぞれ複数買ったので,着こなしに悩むことが減った.どんな服と組み合わせてもそれなりに見える.ベーシックな服には洋服のセンスで悩まなくなるという効用があることが分かった.さすがにジーンズは思想上の理由で買わなかったが,ネイビーのジャケットカーディガンやグリーンのステンカラーコートや白いカットソーは,組み合わせの幅が広く,2つの店で1着ずつ買った.
暮らしにゆとりができてきた.総じてそういうことだろうと思う.そして,ゆとりのある時間を過ごしている人には,いろいろな機会が集まってくる.明日は合唱団の練習.仕事ではCGI開発の案件がひっきりなしに来る.友人知人から電話やメールが来る.そうやって人を引き付ける人がこの世のどこかにいて,その磁力を伝えられた人が次々に余裕のある暮らしへ変えられていく.そういう好ましい波動が,この街のどこかをひっそりと流れている.

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