本格的な人がいると面白い.どんなことにも先達はいて,その人が心から好きだったり真剣に取り組んでいたりする物事に触れることは至極面白い.先達がその事柄を愛した理由があるなら,その事柄はほとんどの人にとって面白いはず.愛される物事はこの世に実に様々にあり,その多くは本にまとめられている.私の5大趣味に纏わる本を5タイトルずつご紹介.
1.機械工学・工学史
工学史という分野はあまり知られていない.専門家の数がとても少なくまだ広まっていない.私は工学の歴史〜機械工学を中心に〜という文庫をよく繙く.ルネサンス以降の天才たちの発明史は面白い.私は初歩なのでMakings Things Move 動くモノを作るためのメカニズムと材料の基本で基礎を学んでいる.しかしこれに慊らず実用メカニズム事典とメカニズムの事典に載っている機械のメカニクスが面白い.CADで組み合わせを考えたくなるし,3Dプリンタを使ってみたくもなる.[ケンチクカ]芸大建築科100年 建築家1100人はものづくりのエッセンスが詰まった本で,何か作ろうと思った時いつも参照している.
2.服,特に紳士服
服の雑誌は読んでも服の理論は読まない人が多いのではと思う.特にスーツは知識がある方が楽しいし,知識が足りないと買い物で失敗しがち.そのくらい難しさを要求する商品だと言えるが,面白さもその分大きいと言える.紳士服を嗜むには本格的な知識が詰まっていて,さすがの私でも少しは詳しくなれた.American Trad Handbookは親しみやすい文章構成なのであまり知らない人にぴったりである.「スーツ」着こなし事典は図が多くたくさんのサンプルから名前や種類を知れる.Men‘s fashion 365 Days 365日をおしゃれに楽しむ男のワードローブもサンプルが多く,組み合わせのコツと奥深さを学べる.「Future Beauty」日本のファッションの未来性展はアートとして研究されるファッションテクノロジを堪能でき,服の可能性を広げてくれる.
3.音楽
合唱または声楽に身を入れてから生活が変わった.声や音に対する認識が変化したのだ.コールユーブンゲンとコンコーネはまだ最初の数ページしか進んでいないが,それだけで進歩があった.聴くほうも進化した.ちくま学芸文庫のマタイ受難曲を参照しつつ鑑賞の耳を養おうと思うようになったし,同じくちくま学芸文庫から出ている音楽理論入門で楽典に親しみ作曲まで試みようと思うまでになった.そもそも私が音楽への関心を強めたのは高校時代に神田で標柱 音楽思考の道しるべを買ったことだった.高校生の読解力で読んでみたが深くて刺激的で探究を進んで求めるようになった.今はその夢も叶い満足している.鍵盤の練習とともに励みたいと思う.
4.キリスト教
クリスチャンになってそろそろ9年が経つ.人の内面ってこんなにも変わるんだなと思う.精神症状はすっかり消え,収入と資産は十分確保でき,職も家族関係もうまくいっている.神さまから添えて与えられたのだと思う.牧師に借りたボンヘッファー 交わりの生活はまだ最後まで読めていないが理解できるようになってきた.黙想と祈りの手引きも説教集でありながら教えられることが多くてためになる.カール・バルト 未来学としての神学は私の通う教会の思想の基礎をなすバルトを紹介する.クリスチャンになる前に読んでいた切りとれ,あの祈る手をはもう一度読み返したい.パンセを読むたびパスカルのユーモアで笑ってしまいパスカルの天才を楽しめる.
5.宇宙
でもやはり宇宙について考えている時が一番楽しい.宇宙生物学入門 惑星・生命・文明の起源は高校地学の内容を深めた専門書で,ハビタブルゾーンやドレイク方程式など先端の話題も豊富な良書.宇宙を捉えるには数学が必要だがカラー図解 数学事典は図が多いためリーマン空間も複素関数も怖くない.物性科学事典は様々な専門用語が数式とともに載っていてNature誌を読むときに参照する便利な本.バイオインフォマティクス事典は大学時代にハマったBIの知識を網羅的に解説した本.細かく読んで楽しい事典である.宇宙はそれだけ多様な分野からアプローチできるしそうしないと多面的理解が進まない.それに気づかされたのはNature誌を購読するようになってからだ.なんといっても世界で有名な雑誌を購読していることはこの変化が激しいとされる時代を適応しながら生きるための強みになると強く思う.
