自分の半生で後悔があるとすれば,高校時代にひとつだけある.バンドを組もうと誘われたことを即答で断ったことだ.誘ってくれた人は,尊敬というか憧れを抱いていた人で,行動力というか巻き込む力のある人.同じ部活に所属していたこともあったし,同じクラスに割り振られていたこともあった.おそらく誘いに乗っていれば,私はドラムかボーカルか作詞を担当し,校内で話題になっていたと思われる.
私は多くの人の過ごし方に反し,高校生活が泥沼であった人である.よく高校が一番良かったとか,高校時代に戻りたいとか,かけがえのない青春でしたとかいう人がいるけど,別に羨む気はないが私は何もない青春だった.本当に何もなかった.ただ自分が滅びることと自分が壊れることを望み,他の如何なる生産的活動を行わなかった.最終的に芸術から哲学と物理学に独力で取り組んだものの,最後に精神が崩壊した.
青春は戻らない.もし人並みに青春がいいもので楽しめたなら,その後の人生はもっと変わっていた.彩りがあったろうし,出会いや友情や恋愛があったろうし,今と連続的な時間になっていたろう.大学生活も連続して楽しめたろう.でも私は大学生になっても孤独に学問する生活しか送らなかった.当時の自分がそう望んでいたからそれで良かったかもしれない.でもそんな人は今考えても奇特である.
高校時代ってなんだったのだろう.もっと楽しめたはずだった.精神を病むために高校に行っていたわけではない.でも私は高校合格の時の恐怖と不安が結局知らぬ間に大きく増幅し,その後10年間自殺願望に苦しむことになったのである.自分の生きた高校時代とは異なる高校生活もあり得たと考えると,自分の不器用さを思うし,もっと別の人生がひらけていたと思うと,今からでももっと人生を楽しもうと思える.
