今バッハのパルティータを聴いていて思った.学生時代の新鮮な精神を取り戻したい.知識への飽くなき欲求,研究で成果を残そうとする野心,鮮烈な印象と感覚.20代の私は世界を常に新鮮に見ていた.それだから大小問わず発見をすると脳髄を駆け巡るほど驚愕した.妻と出会った時も激甚な刺激を得たものだ.私の神経に易感覚性があったのだろう.今は少し落ち着いてきて,鋭すぎなくなってきた.
今は刺激といえば書き物を読む時に起こる.書斎には古今東西の文章作品が並び,いつでも難易に関わりなく読む環境がある.もっと勤勉なら読むが,どうも満足か怠惰か知らないけどそれほど頻繁に読むことをしていない.読むこともある程度にし,過ぎないようにすることは重要であるけれど,YouTubeに頼る時間が圧倒的に長くなっている現在,本から刺激を得ることを疎かにしている節がある.
職能の向上,ウェブテクノロジの追求,語学の課題達成,声楽曲の勉強,聖書の通読.そういう現実的な要請を乗り越える必要があるのだが,あまり進めていない.無理をしないことは重要だし,無闇に多い分量をこなすことは無駄になる.学習は思う通りには捗らない.だから毎日を肯定し,安定を得て,その上に勉強を置くのだ.まず勉強を据えてその上に生活を置くのではなく.
学生時代は勉強優先で,何よりも勉強時間を優先していた.だからこそ新鮮な世界観の中で生きていられた.今は妻との暮らしの中の一風景として勉強がある.本を読む部屋,寛ぎとしての読書,そんな感じだ.どちらが良いということもなく,どちらも素晴らしい.今の自分は学生時代の勉強の仕方の方が懐かしさや幸福が強かったことを思い出し,少し取り入れてみようと思っている.完全には戻せないと分かっていても.
