声楽の先達である「マタイ博士」の影響で,シューベルトの歌曲に親しんでいる.輸入楽譜とリサイタルのCDを貰い受けた上,歌曲を深く読み解く本までお借りし,歌唱指導も受けるという,何から何まで至れり尽くせり.博士がよく仰るのは,どんな歌曲も歌ってみると面白くなる,ということ.一見面白さがわからない曲も,何度も聞いているうちに染み込んでくるのと同じで,歌ってみると繰り返したくなると.
冬の旅,美しき水車小屋の娘,白鳥の歌.これらだけで充分楽しめるのだが,その輸入楽譜にはシューベルトの単発の歌曲も収録されており,野ばら,鱒,魔王などの譜が入っている.知っている旋律が多くて親しみやすく,シューベルトの多彩さを感じられる.最も楽しむ方法は自分で譜面を頼りに歌ってみることだと博士は云う.そのためには音符が読めなければならず,キーボードで読譜を訓練している.
確かに歌ってみると歌えて,それ自体面白いし,一度歌うと脳に多少なりとも焼き付くので,繰り返したくなる.音楽が麻薬だと囁かれるのはそういうことで,繰り返し聞くことで音楽は効果が高まる,と昔の文豪も云っている.多くの旋律や音楽知識を仕入れることは,時間から退屈を省き,空間を美しくする.今これだけ音源が容易に探せる時代に生まれてよかったとつくづく思う.
冬の旅は,第1歌おやすみと,第5歌菩提樹を覚えた.歌っていくうちに旋律をほとんど覚えてしまった.また,白鳥の歌からはセレナーデを覚えた.他にも知っている歌や覚えやすい歌があるに違いない.合唱団で練習中のパレストリーナより,易しめで親しみやすい.パレストリーナで鍛えられた面を活かし,シューベルトにバッハのマタイ受難曲に,どんどん積極的に歌っていきたいとそう思う.
