最近特に思うこと,それは,これが人生なんだということだ.堅実な道をゆくとは,こういう暮らしぶりなのだということだ.毎月給与が入るまで,遊ぶように働き,半分は熱心に,半分は退屈を減らすために,「働く」.労働の実際は,苦しいものでは全くない.むしろ自分にしかできない内容を仕事として納めているので,これだけでありがたく働かせていただくのが筋だと思っている.
給与から生活費が差し引かれたその残りすなわち貯蓄は,毎月数万円あれば上出来.1年で換算すれば,100万円が相場といったところ.毎年100万円の余裕が残る計算だ.近い将来給与が上がる噂を聞くが,肩書が厳しくなることの内実がどれほどか,はかりかねる.しかし給与はどうやら月10万円は上がるようなので,毎年さらに100万円上積みできる.従って,老後2千万円は余裕で確保できる算段だ.
そういうわけで,定年までの長い労働時間をこうやって堅実に,何事も無事に終わってゆくのが推奨されるこの生活が,若い頃の刺激と開拓をベースにしていた労働観からあまりに懸隔,いや,成長したので,比べるに今の実際がまともであるために,こういう人生が普通なのだろうかと訝しむ.大抵の普通の意味での人生の成功者は,堅実な生き方を選択したのだから,この私の暮らしとそう変わらない形で生きたのだろう.
どうやら労働人生はこの持続でしかない.しかし見方によってはたくさんの宝が見つかる道である.今見つけようと思っても,興味を持てそうな本や小説家,既にある程度知っているがより広く究めたい学問,いつも聴いていたい音楽,若き日に情熱を傾注した水彩画やカメラや建築.時間とお金にゆとりがあるので楽しめることは若い時より増えたし,何をするにも自由.なるほどもっと面白くなれる,この人生.
