ある講演の動画を繰り返しみると,初め聴いた時よりも意味がよくわかる.そもそも興味の持ち方が変わってきた自分に気づく.それは移り変わったのではなく,予想に反して深くなってきたのだ.時候の挨拶から始まるだけでも,その挨拶の仕方,表現の仕方に,面白さを感じることが増えた.そして,労働者として社会で暮らして10年以上経っているので,立場が明確になってきており,対等に量りながら聴けるのだ.
文学って大事だと思う.本を読むようになって20年経つけど,海外文学を古典新訳文庫で読み始めた頃から,言葉への感度が変わってきて,物の考え方さえ分からなくなっていた時期を経て,最近特に思考が丁寧に精緻になり,真理を掬えるような文章を書けるように変わってきた.自分の考えを自分の言葉で書き表せることは,そう簡単にすぐにできることではなかった.読書と生活の実経験,交友,一流の刺激が必要だった.
今,文学に関心がある.社会学にも興味がある.曲がりなりにも理系の教養を積んできたが,以前ほど興味を失った.今は読みたい作家が片手で数えるほどであるが出てきて,彼らの作品を文庫で買い集めようかと思い,その後で読む時間をどうやって優先して確保するか案じている.読みたい本があまりに多く積まれている書斎である,読むべき本を選ぶという価値観が邪魔だが,そうする他ないのが残念に思う.
本をずっと読んでいれば,それは有効な時間になる.どんな本だってそうかも知れない.図書館も部録や動画も,ずっと耽っていたくなる.こんな過ごし方をしている30代はそういない気もするが,興味があることはほぼ絶対やるようにしている今,関心が深くなり,味わう箇所が増えている.つまり吸収する量が増えている.今まで雑駁な鶏頭だったので,これからもっと綿密な頭脳を作り上げる時期なのだろう.
