結婚前の独身生活について思うことがよくある.今振り返ると,障がいの発見以前は実に好きなように生きており,社会人として果たすべきこともせず,美術館や図書館を巡り文化に傾倒していた.数学と科学を好んで読んでいて,その点は熱心な勉強家であるが,プログラムで有益なものを開発する技能は半人前で,30歳前後まで仕事にならなかった.そんな人間が好んで文化に耽った暮らしをし続けていたのだ.
熱情の第2楽章に初めて触れたのは川村記念美術館だったと思う.何体ものオブジェが谷川俊太郎作の詩とともに展示された空間で,夜空をモチーフにしていたせいか暗かったと記憶している.その中で熱情第2楽章が繰り返し再生されていた.その時はベートーベンの作品だとはつゆ知らず,優しく落ち着いた曲だと感じたものだが,数ヶ月後実家のクラシックコレクションから探し当てた時は既聴感にやられた.
26歳で社会人デビューして31歳で今の職場に就職するまで,上下に揺れる激しい時代を過ごした.目まぐるしく変わるのは高校生の頃から続いていたので,すっかり人生に疲れていた.しかし,妻と出会いクリスチャンになり就職に導かれてから,この4年の間ずっと平穏な気持ちでの暮らしが続いている.今までできなかったことも信仰によりもたらされる力でできるようになり,仕事も趣味も今何不自由ない.
人生は本当に不思議で何を思っても意外な展開が待ち構えている,と考えるのは簡単である.でも,人生なんとかなるのではなく,自分でなんとかする意識も市民として重要だが,何より神さまがあらかじめ全て決定し,私はそれに従うだけと捉えた方が人生は簡単になる.そしてそれがベストプラクティスなのである.私で決めるのではなく,私の決定も全て神さまがあらかじめ決めていた.御旨に従うだけだ.
