有能な人は重荷であるといわれる.珍しいので重力が大きいのだ.人は自分にないものを持っている人を重く感じるものだ.重さのゆえに押しつぶされそうになることは,誰もが経験しているだろう.有能な人は人を潰す,それが賢い証であるとさえ考えることだってあるだろう.でも,その重い人が本当にその職場に必要だと分かると,どうにかして一緒に働くしかなく,どうやって自分を守ろうか考えたくなる.
職場を首にならない方法は,職場で必要とされること,職場で必要な技能に特化すること,それが常套だ.これをよく考えてみると,もし自分がいなくなったら回らない業務が出てくると容易に想像されるなら,首にはならないだろう.でも,重いあの人がもしいなくなったら,回らない業務があると想像できるなら,その重い人もまた職場に必須の人物なのである.もしいなくなっても代えが利くなら,じきにいなくなる.
誰もが首になりたくない.そう考えているので,代えの利かない人材になろうと研鑽を重ねるのだが,誰もがいなくなってほしい人材を思うことがあると思う.でも,その人もまた首になりたくなく,いなくなっては業務が回らず余計に時間とお金を消費するので企業として手放せない人材なのだ.だから,職場に働く力学とは,珍しさの間の重力関係である.誰かの方に引き込まれそうになったら,離れるか自分が重くなるか.
自分が重くなれば優位に立てる.自分をますます珍しくすれば良い.自分から離れれば一時的にひとりになれる.しかしこれではまた重い方に引きずられる.職場の人材力学に勝つには,自分を絶えず珍しくすること,研鑽すること,他の人たちとは異なることに取り組むこと.そうやって引き込む人材になれば良い.もちろん重さを感じる人は嫌がって離れようとする.けどいずれまた引き寄せられる.珍しくなる,それが答えだ.
