本を毎日読む.少しずつ文庫の中にある何かしらの文章を読む.そうして1ヶ月経ち思ったことは,1日で1冊なんてとても読めないということ.200頁程度の小説でさえ3日かかることは皿で,1回読んでももう1度始めから読み直したいと思う作品も少なくない.一方で今まで1回も手をつけられていない古典や,短編集であるにも関わらずまだ1話も読めていない本もある.本との付き合い方は本ごとにいろいろだ.
なぜ読書が遅々として進まないか.ひとつ仮説を立てる.読書は心を豊かにする.1度豊かになるとひねもす満たされるので,その日は読書が進まない.読書家と言われる人たちはおそらく単に豊かになるために読んでいない.1日中読み続けることなどできるものだろうか.長編で先が気になる場合は読み続けるかもしれない.同じ作者の著作を通し読みしたい場合もあるだろう.でも,1度満たされたらその日はもう読めないのでは.
豊かになり過ぎて本が読み進められないというこの私の見識は,読書家の初期に起こることに過ぎないのかもしれない.慣れてくれば何に対して豊かさを感じるか,それはどの水準の豊かさか.今私が本から受ける豊かさは,純粋に表層的なものかもしれなくて,読書の豊かさはやはりもっと本を読んでいけば異なった楽しみがひらけてくる,そういう類のものかもしれない.だから読書を習慣として続けてみたいのだ.
話を覚えていると,さまざまな場面で語れるし書けるので,これも豊かさの表れだろう.読んだ冊数が重なって本棚が読んだ本ばかりになると乗り越えた知識の量が目に見えるのでこれも達成した豊かさだろう.読書の感想を綴った文章を残している場合は,その考察の深さや鋭さが豊かな頭脳を育んだのだからこれも豊かさだ.本から受ける豊かさは私には多様に見える.もっとずっと本と向き合っていきたい.
