日本では,バブル膨潤期以降,失われた30年と言われている.その初期は雇用もなかった.給与は少しも上がっていない.しかし,GDPは緩く成長し続けている.バブル期までに整備されたインフラは健在で,それほど生活にお金をかけなくても暮らしていける.物質的豊富さにより,生活の困難は滅多になくなった.安い糖質や植物油脂が健康の問題を生じさせているので,社会保障費は今後も膨らみ続けるだろう.
こうした状況を,停滞と見るのではなく安定と見た方が実際的ではないか.これだけ安定して国家を運営するのは並大抵ではない.政治の良し悪しは置いておくが,官僚の努力で組織改革の取り組みが進んでいることを想像する.優秀な彼らの仕事が,社会を見えないところで少しずつ良くしていると私には映る.安定資本主義とも言えると思う.成長や自由を拡大するよりも,維持と安定を重視する経済である.
このままだと2030年には4人に1人が高齢者の国家になる.労働人口は減り続けるので,働き口に困る人は減っていく.道路網,上下水道,電気やガス,通信,海運陸運,コンテンツなど,無料で恩恵に与れる社会は暮らす者にとっては良いものだ.恵まれていると感じる.そのインフラは雇用を生み続ける.私とてWEBプログラマだが,インフラの一端を担っている実感がある.これから作るべき仕事は山積している.
安定を重視する資本主義は,革命による変革を求めない.政治家がたとえ堕落していても,誰も大変革を望まない.選挙では与党が勝利し続け,この国家のために奔走する政治家の本懐を,私たちは見ていく.危うい方向に走りそうなら監視し発言し止めさせる.ということはつまり誰も革命など望んでいないのだ.過去の革命の失敗や無意味さを痛いほど教育されてきた私たち.今のこの社会状態,思いのほかいいものだと私は思っている.
