2005年から2010年まで私は図書館情報学の学生だった.当時の記憶はあまりない.2005年の秋に自殺未遂で逮捕釈放されて以来,私の学生生活は自殺願望との闘いであり,学問を楽しむゆとりなどなかった.司書の資格を取れるプログラムや,エンジニアになるコースが用意されていたが,どちらも身にならなかった.今でこそWEBプログラマとして働いてはいるものの,当時学んだことが生かされたわけではない.
私はひとつの学問を極めて深めたいと考えていた.物理学を修めようと想定していた.しかし高校物理が理解できず諦め,他学部で入学後に独学することにした.建築デザインに進もうとも考えたが,立つ立体を設計できなかったのでこれも諦めた.工学部も考えたが,ものづくりのアイデアなど乏しい家系だから,自分には無理だろうと考えた.私は18歳時点で多くを諦めた.自分の進みたい方向など全て諦めていた.
当時の図書館情報学は広く浅くがモットーで,インターネットによる学問領域の再定義が唱えられていたほか,デザイン学など学際領域との融合や,電子図書館についてなど,かなり多様な議論がなされ始めた時期だったと記憶している.教授陣は学生の多様な背景を尊重し意見を求め,学生は語ること考えること加わることの困難さを味わいつつ,個性を育んでいたように思う.総じてよくできた大学だった.
教授陣の意図に反し,私は好きなように講座を取っていたため,結局,私には体系的な知識が身に付かなかった.大学の講座で何を教わったかほとんど覚えていない.でも,この5年間で何かを得たとすれば,思考の自由度だろうか.もしLISを修めていなければ,一箇所に凝り固まった学生になっていたかもしれない.それは専門家のよくある姿かもしれないけど,広く浅く捉えられる人は,社会にもそう多くない.
