私の愛読書のひとつ,食品成分表.高校生の時に家庭科の授業で副読本として買ったのが最初.当時は家庭科が最も好きな教科だったのだが,その理由がこの食品成分表を読むのが楽しかったからだ.その後,大学ではゲノム栄養学の研究で学位をとり,大学院で生命科学へ転向したのだから,好きという気持ちは本物である.今でも食事を調える時にざっとであるが栄養計算して食べるものを決めているほど.
今は2020年の第8版が最新で,適宜買い替えている.毎年新しい食品が追加削除されているほか,成分値も若干変わってきている.そして,重要なことは,栄養学の紹介ページだ.1日3食とか,主食を取れとか,昔ほど言われなくなったのだ.暗に仄めかしているようにも読めるけど,明示されなくなったのである.今の主流は1日2食,白米・小麦・砂糖は毒だから食べ過ぎは注意せよというのが研究の最前線だ.
今改めて眺めてみると,ビタミンやミネラルを全く含まない食材というのは意外に多い.ビタミンの中でも,全てのビタミンをバランスよく含む食材は限られている.例えばキノコ類は,食物繊維は豊富だし,ビタミンDやビタミンB群を含むのは有名だが,ビタミンA・C・Eはほぼ含まれない.この「ほぼない」という知識は一般にはあまり語られず,食品成分表を読む人しか知らない知識と言えるだろう.
いつも食事によってどのような物質をどのくらい食べているかがわかると,料理も数学で考えられるので私にとっては楽しい.勝手なイメージだけで食べる物を決めてしまったり,意味のない計算を捏ち上げて正当化したりと,食べることは生活の重要な部分であるだけに,正しく食べることを心がけている人は少ないように思う.食事を通して健康に気をつけたいと願う人に,この食品成分表が行き渡ることを願っている.
