物は人を幸せにしてくれないという.確かにそうだ.買った時は広告に乗ってお金を払い陳列されていた商品を持ち帰ったその時は独特の幸福感がある.けどそれは数時間しか続かない.一晩眠れば物質伝達が止んでいるので気持ちは忘れてしまう.私たちはそんな物を作って売ることを労働としている.この考えでは労働は虚しいものになる.物を買っても幸せにならないという事実が,考えるべき命題に思える.
今世界で暮らす人の中で,服がなく食べ物もなく住むところもない人は,全人口の1割もいない.大抵の人たちは服を買いすぎて持ちすぎているし,飽きるほど食べて太っており,長期のローンを組んで立派な私邸に住んでいる.本当はもうこれ以上買う必要がないのに,いまだ多くの商品を生産し,販売し,買ったら部屋に溜め込むか,いずれの機会に捨てるほかない.この繰り返しが現代の無意味の闇だ.
もう私たちは近々この生産消費経済を卒業することになるだろう.無意味にすぎるのだ.私の考えでは,労働を無意味にしてはならない.誰かの役に立つことが喜びとなるように人間は創られている.それが経済と結びついた形態が労働なのだ.だから,これ以上労働を無意味な事業にしないでほしい.物を作って売ることのほかに,人間を幸せにする労働を増やしていかねば,現代の問題は解放へ向かわない.
私が今までさまざまな物を買い込んできたから,そう考えるだけかもしれない.私こそもっと買うだけでなく自分で作ってみるべきなのだろう.作れない物をこそ買うのだ.物を買っても幸せにはならないが,物を作れば幸せになれる.作れれば将来誰かの役にも立てるだろう.なるほど商品を作る人は案外幸せなのかもしれない.買う側が幸せになれないだけで,生産者は幸せなのかもしれない.そう願う.
