私が持っている物は,私が欲した物である.手放さなければ生涯を共にする物となる.この事実を私は知らなかった.物は無尽蔵に買えて持てると思っていたから,生涯を共にすることを考えずにどんどん買っていた.特に服や本だ.物とは一時的な付き合いだと思っていた.でも,管理者である私が手放さない限り,物はずっと共にある.長い時間,ずっと一緒にいる.この事実からお金の使い方を考えたい.
一度,物を買うと,ずっと私のもとにあり続ける.この事実は,当たり前のことだが,私には不思議に感じられる.それはなぜなのだろう.ずっとあり続ける物などないことは承知している.時間経過で劣化するし,事故や災害で失われることもある.紛失や損傷で処分せざるを得なくなることもあるだろう.でも,大切にして持っていれば,品質がことのほか良くなくても,ずっと持ち続けることができるのだ.
私のワードローブには,20年前に買ったコートがまだ掛かっている.15年前に買ったマフラーや,10年前に頂いたシャツやカバンも持っている.物持ちが良いからだろうか,いや,単に捨てていないからだ.捨てるほど傷んでいないからだ.或いは捨てる基準が緩いのかもしれない.まだ着られる品質だし,実際明日着られるから,明日着てみよう.そう思うので,なかなか手放さない物を多く持っている.
物を買うことを簡単に考えていると,部屋が物に溢れてしまう.本当に自分が欲しい物なのか,もっとよく考えてから買う判断をしたい.考える基準を常に持つことは大事だ.近々使うかとか,状態が良いかとか,新しくする必要はあるか,そういった身近な理由だ.この夏に書斎を整理したことで,自分の持っている物がよくわかった.つまり自分が欲してきた物がよくわかった.その延長に今の自分があるのだ.
