生涯を共にする持ち物,という概念が好きだ.消耗品や食料は食べて捨てられる運命にあるけど,一度買ったら捨てなければずっと持っていられる物は,生涯を共にできる物だ.捨てなければずっと持っていられるので,大切に使おうとする.少しぼろくなったり汚れてもずっと持っていたくなる物.それこそ自分の本当に好きな物,長く使っていける物だ.そんな物が少しではなく,わりとある人生を送りたい.
よく身軽に生きたいという人がいる.知識人にも多い考え方だ.生涯を共にするなら物は少なく,思い立ったらすぐに移れるようにしておきたい.そういう願いからくる考え方だ.でも,私は家移りしたくない定住派だ.しかも,同じ道を繰り返し歩きたい派で,同じ物を繰り返し使ってもいいと思うほうだ.なので,物を少なく持つことにこだわりはない.むしろ,趣味の広さの分だけ物を多く持ちたい.
物を多く持っても,それらがどれも長く楽しめる物なら,買って持っておく価値がある.いずれ使わない物は手放すが,いずれ使う物を私は使う人なので,部屋に空間を割いてとっておく.そして,いずれ本当に使うので,しかも激しく使うようになることが多いので,とっておいて良かったと思う.そして,新たに買うはずだったお金や時間や労力がかからなくなる.買って捨てるまでの無駄もない.
今持っている物の8割は,生涯を共にする物だと思って置いている.本も定番や基本的で古びない内容を扱った物が多く,ずっと持っていられる.趣味が限られてしまうと思うこともあるが,本のジャンルは広いので,その知識に基づいてすぐに必要な物を買って新しい趣味を始められる.本質的な本を多く持つことは,生涯を共にする物を選ぶ上で役立つことがある.そんな買い方,物の持ち方もある.
