買った物は,捨てなければずっと生活を共にする物になる.服や本や機械類がそうだ.ゆえに,空間の大きさが限られているのであれば,買いすぎることを慎まねばならない.しかし,食べ物は異なる.食べてしまえば代謝され排泄されるので,生活をずっと共にすることがない.共にしたとしても分子的な意味で数ヶ月である.空間的な制限は永久ではない.ならば,食べ物は無尽蔵に買っていい物なのであろうか.
食べ物を無尽蔵に買うことは,一般的には慎むべきことである.食べ物も食べる前は一定の空間を占めるから,食べ物でない物と同様に空間に収納しなくてはならない.さらに,食べ物は時間的に変化する.多くは劣化,腐食である.もし食べる前に腐っていたら,食べるのをやめ,処分しなくてはならなくなる.食べ物は長い間保存しておくことができない.食べ物は食べられて初めて身を利するのであるから.
それでは,食べ物が有限の時間しか共にできない物であることがわかった.食べ物の買い過ぎとは,一定時間で食べ切れない量を買うことである.買い過ぎなければ,食べ物が占める空間はそれほど広いものにはならない.すなわち,生活を共にする物が多いほど,食べ物が占める割合は小さいだろう.食べ物は確かに生活する上でなくてはならない物だが,多くを持つことが推奨されない物なのである.
1回の食事で食べ切れる量にも限界がある.このように,食べ物にはいくつかの限度がある.そのため,多くを買うことができないし,多くを持つこともできない.長い間生活を共にすることもないのだ.食べ切れる量を買って食べる,これを繰り返すことが食費の性質である.食事回数を減らしたり,食事の量を減らす場合,食べ切る量も減るのだから,買う量も減る.何でも無尽蔵に買うことは慎むべきである.
