私は税金で生きている.生まれてから,義務教育,公立高校,国立大学に至るまで,さらに社会人になってからも,福祉サービス,障害年金,そして現職場の賃金.私が稼いだ額はほとんどないに等しい.私には稼ごうという発想がそもそもない.公務員の家柄に育ったことが大きく,会社で働く上での心構えさえ身につかずに社会人になった.会社員生活は合計しても2年続かなかった.もとから稼ぐ気がないのだ.
稼ぐといっても,どうすれば良いのか皆目わからないのである.いくら知識があって技術が身についていても,それで稼ぐ術を全く知らない.何も思いつけない.そういう教育は受けたことがない.大学で幅広く学んだし,自由と自主性を重んじる人生観を植え付けられた.しかし,それは社会では通用しないもので,会社ではまだしも,公務員の環境では全く役に立たない,錯誤とさえいえる代物だった.
今私はもう学生ではない.再び学生に戻る気もない.歴とした社会人であり公務員である.来秋には無期雇用の公務員となる.今までの人生で経験したさまざまな良い思いは全て税金が運んでくれたもので,自分で稼いだ結果ではない.稼ぐとなれば私は必ず社会の底辺かそれ以下だ.生活保護で暮らすしか能がないと思う.でも,マインドはそれで満足する自信がある.幸せは安く済むことをよく知っているから.
貯蓄を失ってその日暮らしの人がいる.さまざまな環境のせいで高い教育を満足に受けられなかった人もいる.私の過去は恵まれたものだった.その恩恵を返報する義務が,私にはあると思う.私はもう充分なのだ.これから私は私財を自分のために使わないことを徹底していきたい.進んで募金献金し,家族に還元し,私欲のために決して使わない.それで私個人の人生で充分なほど幸せをいただけるのだから.
