長く生きることに楽しみは多い,そう信じている節がある.私が妻より長く生きる場合も考えうる.そうなれば,今のマンションから引っ越し,売却し,近所のスーパーに近いワンルームのアパートを借りて,読書と制作の老後を送る.これは私が今抱いているオプションの一つだ.この利点は,自分はやはり夢を持って生涯生きる人間なのだと確認できることや,今の情熱が生涯続く可能性もあると知れることだ.
私には長く続いている趣味や研究がいくつかある.ウェブ,数理科学,外国語だ.もう20年の付き合いだ.さらに経験から,昔熱中していた趣味を再開する楽しみも知っている.つまり,情熱に投資すれば,生涯楽しみの配当がつくことを知っているのだ.時間やお金やエネルギーをかけただけのことはある,その物事は生涯にわたって楽しいと認知され,ますます親しみを覚え,深い認識をもたらすことさえある.
この楽しみが多い人生を,私は空しいとは思わない.生きていて無駄だったとか,何も意味がないとは到底思わない.むしろ,若い時から夢や情熱を追求した時期を経験したことで,夢や情熱を持ったまま生きていいと肯定し,その延長で収入を得て生活できるようになった.この十数年の大事業を成功させたことは,私の人生の根幹的成功である.これを実現できたことが,今後も人生を謳歌できることを保証する.
もし老後の長い間を妻に先立たれて過ごすなら,近所の30平米くらいのアパートで本を読み散歩しウェブを作って過ごすと思う.この習慣は大学院にいた時と同じだ.あの時代は最も希望に溢れ充実を覚えた時期だった.それを老後に再体験するのだ.この考え方は良いと思う.天へ召される希望を思うだろうから.なるほど多くの資産は確かに不要だ.今しかできないことにお金をかけるとて,そう多くはいらない.
