音楽と,少しの食べ物と,本さえあれば,ずっと生きていける.そう26歳の時に本気で考えていて,ツイートもしていた.その暮らしは実現し,YouTubeで素晴らしい演奏を無料で聴けるし,近所のスーパーで食材を安く調達し,書斎の蔵書には満足している.26歳の時と違って一定の収入が入るので,必然,毎月お金が余る.そこで募金や献金を収入の2割している.若い時の夢は実現した.それも,ことごとく.
新卒で正社員になったが,貧しい生活に興味があった.自分がそんな生活になることも望んでいた.退職するのには時間はかからなかった.初のボーナスをもらう前に退職し,アルバイトの生活になった.好きなことを極めたいと思っていて,数理科学の研究を進めた.すごく充実していた.しかし,悩みは深かった.クリスチャンの妻と出会い,教会へ通うようになり,出会って1年後に結婚することになった.
結婚しても3年間くらい,アルバイトで暮らした.すごく幸せだった.それは結婚したからかも知れないし,貧しい生活をしてみたいという願いが最高の形で実現したからかも知れない.住みたかった街に住むことが叶ったこともあるし,好きな人と暮らせることもある.貧しい暮らしだから幸せだ,とは言えない.けれども,多く稼ぐ人生に少しも憧れなかった,そんな境遇で済んでいることは,恵まれていると思う.
26歳の時に望んだ貧しい暮らしとは,お金をあまり使わなくて済む生活のことだ.本当に貧しい人生を望んではいなかっただろうと思う.今お金にこだわらない生活を実現できている.収入は多くないが,支出はそれ以上に少なく済んでいる.仕事は大変でない.今のこの暮らしは,まさに自分の望んでいた人生,望んでいた以上の人生だと思える.これは自分の力で実現したことではない,神に感謝を祈るばかりだ.
