私は,自宅に図書館が欲しかった.大学で図書館情報学を専攻した動機である.最新の本,特に国内文学と学術書には詳しかった.今書斎に「図書館」を持つことができた.目標を達成した.すると,持つことを達成したので,持った図書館で何をしたいのかという次の問題に移った.図書館から本を減らすことにした.減らすのは紙の本であり,電子書籍に移そうと思った.紙の本を減らして電子で持とうと思うようになった.
知識を何に使いたいかという問題でもある.お金を稼ぐために,お金を生むために,使おうとは今はまだ思わない.知識を使って何かを生もうとは思う.快楽だったり,会話の種だったり,信仰を深めるためのものだったり,直接的に稼ぐことにはならないが,生活に役立てるために,或いは人格陶冶や人助けなどで人の役に立てるために活用したいとは考えている.哲学や数学など無用の知識も役立つことは痛いほど知ってきた.
10年くらい前は,20代らしい仕事への輝く期待を胸に努力して知識を得ようとしてきた.そのための最新ツールには目を輝かせてかなりの数試してみた.今は,仕事に対してその期待ほど甲斐が得られない人生だとわかってきたので,資産に余裕が生まれたら労働時間をむしろ減らそうと考えている.仕事は嫌ではなく好きなことではある.でも,お金のために働いていると思えず,さらに働こうという動機を得たことがない.
若い時の夢である私の図書館を構築できた.数百万円かかった.それを達成して,それをどう使おうかという次の段階へ行った.夢を達成している人生を進んでいることを確認した.次を歩み出す余裕がついてくるまで,しばらく案じてみたい.達成できずにいる若い頃の夢はなんだったか,そんな夢がまだあるのか,これから抱くべき夢は何か.未来志向に偏りすぎず,現在を味わう時間も増やしたい.バランスがとれてきた.
