Yチェアを迎え入れて1週間が経つ.軽く,表面が滑々と乾いていて,思っていたほど大きくない.ルンバが通過できるくらいには脚が広く,適度に背を凭れかけられる.総じて何の不満もなく書斎での生活に溶け込んでいる.Yチェアによって本を読むことが楽しくなったのは大きな変化だ.人文系の本や小論を何本も読んだ.夜に多灯をつけて音楽をかけつつ,本を読むのが幸いだ.やはりYチェアによって書斎が完成したのだ.
Yチェアを買ってから,何も買っていない.スーパーで食材を買ったのを除けば,千円も使っていない.物質的にすっかり満足してしまって,これ以上はないという感じだ.IKEAのポエングは眠ってしまうが,Yチェアで眠ることはできない作りだ.なので,Yチェアで読書してポエングで眠る,という夜を何夜か経験した.多灯がまた睡眠を誘う.書斎が何かすごく贅沢な空間になってしまった.これでいいのかとの思いはある.
この書斎に不足はないが過剰はある.しかし,不要なほどではない.必要な過剰だ.充分すぎる,と言ってもいい.今年は生活費が3ヶ月の黒字に続いて3ヶ月赤字で,今のところの合計では赤字だ.2ヶ月でゼロになるくらいのペース.つまり思い切った投資をしたことになる.その対価は充分に受けている.何かこれ以上の質や価値を生活に求めようという思いがなくなり,ただ人生の意味を増やそうと読書するようになった.
買い物が終わったというのは本当だ.もう何も欲しいと思わない.あれほどこだわっていた食材も,そこそこ栄養学を守れれば厳格にしなくていいと思っているし,食べたい物がない.物質的欲求が消えた.この方向で良いと思う.37歳中盤にして物質的に達成した,と私の人生碑に記された.これからどんなことにお金を使うかわからないが,それを探す頻度は確実に減る.特に物を増やすことについては慎重になるに違いない.
