社会人になって10年になる.修行期間が2〜3年あった.雇用が安定したのはここ5年のことだ.10年も社会人をやっていると,大体の経験が揃ってくる.もう今は大きなプロジェクトに加わったとしても燃え上がらない.新しい仕事を任されても張り切らない.健康を最優先に考えて,エフォートをほどほどにする.労働だけが人生ではない.毎日のプライベートライフや定年後こそ優先度が高い.労働に希望を持ちにくくなっている.
それは現代の真っ当な考え方である.近代の賢人たちが思い描いた理想でもある.それを叶えれば,私の今の暮らしもひとつの解決された姿になる.そういう背景の骨があるから,私の考え方は上司に何か言われても,あまりぶれない.数年前に働き方改革が始まってから,日本のビジネスの雰囲気は大きく変わったように思う.有給休暇の消化,ハラスメント対策,労働時間の更なる短縮.世界標準は改善し日本もそれに続いている.
現代はそんなに働かなくていい時代なのだ.お金は刷られ飽和に向かう.物は次々開発され流行が短くなる.人も情報も容易にアクセスできる.都市は車なしでも住みやすく,物を多く持たなくても物質的に豊かに暮らせる.人類史上最高なのである.これを維持しようと考えるのは私の世代であるY世代の特徴だと思うが,産業の革新のために働こうという動機づけが薄いとも言える.ほどほどに働いてほどほどの給与を貰うだけだ.
楽しいこともいろいろ多い.娯楽以外に打ち込めるものがある人は尚のことだ.こんなに暮らしやすい時代は昔の未開文明にもなかったろう.このままで暮らせば,温暖化は進み,化石資源は枯渇し,搾取は止まらないから,問題もある.それでも私がこの国この地域で満足して暮らせているのは事実であり,その維持を考えるのも自然だろう.何か考え方が間違っていると指摘されても,のれんのようにさらっと受け流すくらいだ.
