開発を職としていると,休日にも開発したくなるもので.新しい技術を見かけると,追いついていきたい,身につけていきたい気持ちに火がつき,数日をその技術の習得に費やしてしまう.新しい本を買えば早いが,家じゅう本ばかりになっているのでできるだけ公式の文書で習得しようと試みる.英語が読めたらもっと裾野が広がるのに,と思う間もなく自動翻訳を使って英語の文献もばりばり読みこなす.ということで,暇をいかに作るか,いかに休息するか,という話題を就寝前に考える.
そういう生活様式だからか,給料を気にしない開発者は多い.調査に費やしているといつの間にやら口座の数字が増えていて,少しは嬉しいが,それも束の間,すぐさま技術を吸収せんと画面に向かう.休日も徒歩の散策で考え,眼鏡で青い光を遮断するための部品に交換に行っては少しの間健康を省み,食材もすっかり熟知した神経に作用するものを選んで買って帰る.一日中座って新技術の噂を追ったり,何か作ってみたり,文章にまとめて公開したり,そうやって神経系を保守することを厭わない.
開発者に休日はないが,暇も退屈もない.他の職種の人が安穏とTVや雑誌や新聞をみている間,開発者は作りたいものを考え,生活を一変させる開発の種を育み,期待と興奮でうじうじする気持ちを開発へと発散させる.そうした生活にすっかり慣れきると,技術で職を失い切ることなど考えもしなくなり,将来は興奮の時間,永遠に興奮の人生であり,やや危険を感じるも,近所の貧困生活者のために「退屈しないための情報技術」という講義を無償でしたいくらい,誇り高い人生へと様変わりする.
新しいことを考え出すことを苦もなくできるようになれば,とんでもなく楽しい時代なのだが,考えられた他の人にとっては少子高齢,停滞経済,災害,軍事など危険が多い時代に映るかもしれない.しかし,大学で情報技術を,特に情報学部を卒業したような人にとっては間違いなく面白い時代であるから,大学で情報学を修めることを勧めたい,社会人であってもである.世界が一変する.数百万円の価値はあると思う.情報学部は偏差値が低めで合格しやすい.情報学部の勝利である.
