今年の情報通信白書を読んでいる.日本が世界的に珍しい傾向を示しているのが面白い.技術分野では,特に半導体を除く電子部品や機械のメカニクスに関しては世界で最も高い技術を持っている.しかし,データの活用の面では,何だか漠然としたセキュリティやプライバシーの不安から,活用しようとさえ考えない企業が3割あるし,人材不足や費用対効果懸念の点から推測できるように,国民の知識レベルが低くとどまっている.
ITに関して,知識や技術水準の格差が広がっている.また,セキュリティの点を恐れて,データ活用が進んでいない.長らくの不況で人材が育っていない.これらの問題を抱える国は,世界で日本だけだ.世界の標準はもっと異なった傾向を示し,異なった問題を抱えている.日本はまだそこまで至っていないか,これからもそれを免れる可能性がある.すごいことだと思う.日本のITは独特の発展を見せているので,今後が楽しみだ.
世界の災害に派遣される日本の救助対応が,世界で最高評価を受けている.日本人が劣化しているとか,日本はもう終わりだなどという論調があるけど,実は日本は世界で独自の個性の尖った方向へ直走っており,良くも悪しくも世界で一定の存在感を放ち続けている.ITで先端を走っていないと諦めが叫ばれるが,なんだかんだ研究者数は世界3位で裾野は広いし,論文数は減っているがインパクトの大きい研究は依然として多数ある.
研究費が削減され,博士課程の処遇は恵まれていないが,政府はそれなりに考え,お金を回し,努力している.国民側がITのスキルや知識を向上させていなかったり,新しい使い方やアプリやサービスを避けたりしているだろう.なぜここまで独創的になってしまうかといえば,高い教育と知識や情報が溜まりに溜まっているのに,世界の情勢に疎く,世界の情報をとりに行かない,という国民性があると思う.国内で満足している.
