ドーパミン的幸福が人を幸せにしないのは,上限がなく依存性があるからだ.達成するのも考えものだ.高級品を買うと,物欲が消えるならいい買い物だが,さらに高級なブランド品を欲するなら危険だ.物欲には限がない.そういう意味で,そこそこの価格の物を買って満足する庶民的生活は賢いと思う.ミニマリストが気に入った低価格の物で満足するのは正しいと思うし,その物を大事に使う姿を見ると,頭が下がる思いになる.
今の若い人や中年層が給与が上がらないのに何も文句なく働いているのは,低価格帯の商品の品質が良いからだろう.UNIQLOも無印も,百均やIKEAも,ひと昔なら数倍の値がつくような品質やデザインの商品を,低価格で販売している.私も例外なく買っていて,毎回すごく満足する.満足してもう買い替えなど考えられない物も多い.10年以上使っている物も少なくない.そのくらい品質が良い物が安く手に入れられる時代である.
物欲を消す方法をいくつか知っている.買いたいジャンルで自分が買おうと考えうる最高額の品を買ってしまうという,一点豪華主義.これも有効で,私はこの方法で鞄やスーツ類や動画カメラなどを買わなくなった.品質の良い物を持ってしまうと,それ以上を求めたい気持ちが消える.自分の能力も同じようなもので,ある程度極めてしまうと,それ以上を求めなくなる.満足するからには最大値がある.それを超えると不幸になる.
そう,自分が幸せでいるために買ったり努力するのであって,ある程度持ったりできるようになると,それ以上を求めない方が幸福でいられる.物欲もある程度以上を求めようとしているときは,不幸な依存症へ入りつつあると自戒したい.今以上に求めることには慎重になるべきである.壊れたら買うというときは,同じものを買うようにしよう.そうすれば新しい価値について余計に悩まなくて済む.物で幸せになるのは時に難しい.
