もう10年前になる.私は18歳に障がいを負った者として,障害年金を受給した.その額は5年遡及なので,数百万円に上った.私はこれに感謝している.いくら若くして障がいを負ったとはいえ,貯金することも難しい額を一度に受け取れたのは,人生でも稀なことだ.大企業のビジネスパーソンでさえ,ボーナスは一度に百万円を超えるくらいだ.数百万円の大金がまとまって入る経験は,そう普通に生きていてもできないことだ.
私はこの資金を,使わずに投資した.株式である.小学生の頃に株価欄を見ていたので,追い方はわかっていた.実際,証券口座を開設する以外,困るようなことはなかった.時流に乗れたこともあり,6年間で2.5倍にできた.しかし,コロナ禍で暴落したため,その儲けは飛び,今では障害年金を受給した額くらいに戻り,株式で増えた経験はプラマイゼロになった.私はお金の上下を通じて,無償で株式投資の経験をできたわけだ.
この株式投資の経験は,私の人生にとても役立っている.富やお金持ちに憧れないし,怪しい商材を欲しいとも全く思わないし,うまい話がないことくらい大体わかる.苦労して貯めていく堅実さはまだ覚えていないのが難点だが,寄付や贈り物など,家族や知人や教会への振る舞いは良くなった.お金をうまく使えていると思う.そうなれたのも,株式投資を満足するまで成功し失敗して痛い目を見たからだ.本当にいい経験をした.
障害年金をどのように使うか.障がい者は給料の良い仕事がなく,経済的に困窮しがちであるから,障害年金も生活のために大事に使う人がほとんどだろう.そもそも,そのためのお金であるはずだ.私は幸い結婚していたし,職業も世の平均から少し少ないくらいの収入がある.今私は何も困っていない状態で妻と2人で暮らせている.妻とは財布を分け,経済的に独立できている.この生活を確立できたきっかけには感謝している.
