正直なところ今まで仕事を大したものと思っていなかった.効率より楽しむこと.稼ぎよりやりがい.出世より満足.確かにこれでもいい.いいのだが,ひとつ決定的に身につかなかったことがある.それはなにか.心の余裕である.いつも職場に向かうときは好きなことを考えて通勤していた.物理や数学や哲学など.職場へ行くと余裕なく開発を進め,帰路には決まって食料を買い,家に着くと早速ひと食らう.風呂に入って半眠し,PCを開いて開発の記録をつけていると妻が帰ってくる.調理し第2食を妻と摂り,家事をしていると夜も更けて明日の早起きのため早めに就寝.従って,心に余裕があるのは妻と過ごす時間だけなのである.
仕事を楽しめる能力はひょっとすると素晴らしいかもしれない.昨日職人が仕事に対する思いを語った記事を読んでいた.一流といわれる職人.共通することはしかしながら,押し並べてみな,仕事が大嫌いということだ.でも,その仕事がいちばんやっていたいのだと.仕事が好きで楽しく努力を続けられる人は千人に一人もいないというのだ.
肩を透かされた思いだった.自分はウェブ開発を面白い仕事だと思っていて,毎日楽しく働き,勉強させてもらっている.そんな人は千人に一人だという.そんなわけがあるまいと思ったが,一流の職人が云うのだからそうなのだろう.自分はきっと珍しく恵まれた人なのだろうと思い昨日は就寝した.
今朝はっとしたのは,もしほんとうに千人に一人しかいないのであるなら,努力すれば簡単に一人前になれてしまう,しかしそんなに簡単な話だろうか,努力して一人前になることは難しくない,誰でも一人前だから職をもっているのだ.だとすると,まだ一人前ではない自分は一人前になった後の変化を知らないだけなのかもしれない.とすれば,今の自分に必要なのは一人前になるための修業だ.それは量をこなすことだろう.だから,今年は実装と読解の量をこなす年にすると決めた.腕に定評がつくと余裕がもてそうだ.
