世阿弥の風姿花伝には,芸事に関するFAQや心得が述べられているが,その序章には年齢と芸の熟達の関係が記されている.7歳から始め,18歳で事情が変わり,25歳で評価され,35歳で頂点に咲く花.花を認識できればその花は生涯無くならない.だから自分の花を弁えることが重要であると.思わず35歳定年説を連想した.プログラミングにおける花とは,自分の得意なこと,自分がすぐにできること,を意味することは風姿花伝と変わらないとすると,自分の花を35歳までに弁えることが,開発職で食っていくうえで重要だということになる.
開発と云っても細分化できる.言語の別もあるし,ハード,ソフト,ウェブ,アプリ,ゲーム,グラフィクスなど,要求水準が全然違う.少し齧った程度で重宝される職場もあれば,定年まで同じ役割を担当される方もいる.でも,開発は職業として成り立ち続ける時代なので,正直新規に参入しても食っていけるので,新しい人に入ってほしいが,どうやらそう簡単でもないと思われてしまう.理系の素養を持つ若者が分野に構わず参入するので,元々の専攻から流れた分,深刻に規模が縮んでいる産業が国内で増えている.
若い分には35歳まで様々に上達すればよいのだが,その先である.私は来年35歳になる.だからまだ分からない,その「衰退」を.風姿花伝には40代半ばから衰えが始まるとある.巷では定年説も45歳くらいまで延びている.でも多分,それ以上は延びない.45歳以降の学習や思考の骨に関する本が売れている.氷河期世代が管理職となり,その少し上のバブルな方々が再構造処置され,行く宛がなくなっている.45歳から始めたプログラミングで仕事になるかといえば,なる人々だっているにはいる.
プログラミングはそれほど難しい技能ではない.ただ,技術は多様化しているので,専門が持ちやすいわりに,すべてを弁える人なんてどこにもいない.何か得意なことについて時間をかけて咲かせ,その線で再就職できれば,楽しい人生が待っている.プログラミングは仕事を作る.その技能に年齢制限がなくなる時代が来るはず.というのは,コンピューターやシステムやツールが難しいのはUIデザインの所為である.計算機が単純でないはずがない.よく洗練されたUIが,仕事を失った人々の口にごはんを与える日が来るのである.

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