正午過ぎから気分が乗らず,鬱と疑うほどだった.しっかり食べているはずだし,鬱とは縁遠い性格だから,午後も乗り切れると思った.すると,過去の思い出が鮮やかに巡ってきた.煌めく光景もあるし,恐怖と絶望の時代もあった.なぜこんなにも鮮やかに覚えているかと思うと不思議で,そう思う間もなく頭の中で音楽を切り替えた.
本年35歳,折り返しと云われる齢だ.労働人生はあとたった30年.稼げる額も高が知れ,人生計画を練り直す時期.昨年に比べ様々なことを考えられるようになった.お金の使途,家族の愛情,仕事の知恵.考えてもみなかった主題に格闘する姿勢になった.思い出に絡まれることも増えた.確かに美しい半生を過ごしてきた.本が書けるほどである.
仕事は順調だ.今まではプログラマ,所謂コーダーの仕事だったが,きょうはウェブデザインを任された.明日は制作したサイトの実装の面を説明する機会がある.また,新たなチームで新規開発を担当する案件も受ける.さらに合唱団の練習に参加し,来月再び第九を歌い,5月にはマタイ受難曲の一節の半分を教会で独唱する.
昨年と異なる精神である.変化には苦しみが伴うものだろう.食事では対応できない精神の深部で,うねりが大きくなってきた.まさかこんな風に変わりそうだとは思わなかった.しかし確信したこともある.人生は楽しいことばかりだということ.このまま楽しむことが続けば,変化も歓迎され,物事の程度を深められそう.年齢を経るにつれ,できなくなることもある.その対処も近々学ぶだろうし,それは楽しいはずだ.

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