数学を面白く紹介する本が増えて久しい.高校までは,チャート式の色を競い合い,解法や証明を文章にする技術が現代文に通じることが面白いと思ったものだが,数学が形の科学だと知ったのは大学院の時.それまで苦行の思いで研鑽した数学が,直観的な捉え方でも充分だと知ったとき,数学は自由だと快哉を叫んだものだ.おかげで新しい数学を発明するに至った.数学はなお面白い.
その数学に,最近時間を割かなくなった.知らないことはまだまだたくさんあるのだが,それ以上に数学に通じる作曲とプログラミングに,どうやら没頭している.自分が没頭していると気づかないくらい,のめり込んでいる.どうも自分の思うことが思うようにできるのは数学を学んだおかげらしい.世界も人間もその思考も,みんな数学.構造あるところ数学あり.数学は万物に通じている.
確かに数学を愛する人が増えたとはいえ,まだ希少性はある.数学者を変人にみる向きも,好きではないが,ある.だから数学は限られた人にしか好きになれないとよく云われていたが,それゆえ一度数学に眼を開いた人は,誇り高い心で数学に向き合っている.希少な人物とされることと引き換えに,誰もが味わえるわけではない世界の貴重さに感動しつつ,数学者を讃える心情さえ生まれる.
数学は確かに難しい.でも,こんなに素晴らしい文化があるだろうか.何かを犠牲にしてでも身に付ける価値のあることなどこの世には少ない.でも数学は真に学ぶ価値がある.自分の思うように物事を好むことができるから.思うような論理を組み立て,思考を直接実現していけるから.じきに夏休みが来るが,プログラミングを昼間に,数学を夜に,嗜み上げる時間にしたい.それによって私と同じ個性はなかなか存在できなくなるだろう.

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