デザインとは,サインを消すことをいう.サインを消す.優れたデザインのプロダクトは,しばしばそこに存在していることを忘れる.そこに多くの知恵が詰まっていることを気づかせない.しかし,存在感がないというわけではない.逆に,記憶に残る形で親しみが増し続ける.好んで何回も使っているけど,一度も困ったことはないし,使用時にストレスもない.それが優れたデザインである.
優れたデザイナーは,自分を消す.自分の考えを,工夫を,苦労を,そういったものを微塵も感じさせずに,プロダクトを作る.サインを消すのだ.自己主張するものは,デザインではなくアートであるといわれる.デザインは自己主張しない.それでいて今までにない便利さ,好ましさを,購買者に与える.そして,長く使ってもらう.
ウェブデザインにおいても事情は同様だ.斬新さも大事かもしれない.でも,使いやすく,親切で,余計なものが落とされたデザインは,主張が強いウェブデザインより好まれる.ウェブ界隈では,発明はすぐに広まるが,広がり真似される発明は,しばしば主張のない,簡素で基本的で易しいものである.斬新なデザインがあっという間に普及しても,退場までは早い.
流行と定番.新しさを求める気持ちと,分かりやすさを重視する気持ち.この釣り合いのとれたデザインが大切になってくる.当然,ウェブデザインだけの話しではなくなる.コンテンツ,メッセージ,全体の雰囲気.ひとりひとり感じ方の違うユーザーに訴えるには,分かりにくいデザインは避け,誰もが迷わず困惑せず使えるデザインを提供する,最近私はそこに行きついた.サインを消すことについて.

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