情報建築の材料は言葉である.計算機が文字の処理を得意とし,ウェブが書き物の文字で作られることから,計算機システムにおける建築が言葉で構成できることは不思議ではない.情報建築で用いるシステムは,分類,ラベル,案内,検索の4要素であり,メタデータやシソーラスで統制もする.これらが,ウェブで探すときと建築を利用するときとで類似している部分や相違する特徴がある.
分類は,ラベルの集まりを構造化したもの.案内は,設計者が提示するが,検索は,利用者が探索するもの.そんな区別も無にするほど,情報設計は自由で厳しい.案内でも検索でも,分類は重要だし,ラベルは必須.分類とラベルは,生物学の学名と系統を彷彿とさせるし,検索機関は,検索の後に案内が出るので,情報建築にはどこでも適用できる構造はなく,背景にはITテクノロジの制約がある.
構造については,いくつものベストプラクティスが知られているうえ,航空や銀行や病院など,業界で定型的なデザインが決まってきている.航空らしい,銀行らしい,病院らしい,一目でそれとわかるデザインである方が,使いやすく差別化も図りやすい.それだから情報建築家は新しい構造を持ち出すよりももっと精緻な仕事をしている.
しかし私は数学からグラフ理論やトポロジーや関手や待ち行列などの構造をウェブに持ち出すことを考えている.有名なUIパターンにはない構造がまだ多くある.数学の構造は,世界の構造だから,より多くのことをウェブで表せるようになるのかもしれない.分かりやすさとは,どこにでもあり,見て使い慣れたものであるだろうけど,考えて欲していたそのものと出合う感動でもあるだろう.計算機の数学といえばAIに収まってしまう昨今,現役の数学から引き出せる構造はまだ多く,ウェブへの応用も広い.

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