家族で話題になったことだが,何かやってそれについて云われるとき,言われるとうれしいことばは「すごい」ではなくやっぱり「ありがとう」だ.私はありがとう派で,家族はすごい派だった.私は自分に自信がないことはないし,すごいと云われると勘違いするので,すごいと言われ慣れていない.でも,ありがとうなら,一時的に最高の気持ちになれる.一時的であることが重要だと思う.
ほめて育てる育児法が流行った.ほめられて伸びるタイプと公言する若者も多かった.人を自分と比べるからか,本当にすごい人と出会っていないからか,すごいとほめる人は少なくないし,自分がすごいと思えずに育つことが,自尊心や自己効力感やセルフエスティームを損なうとの見解もあるから,親が子どもをどう育てようが,どう育つかは子ども自身の問題だと思う.
人は誰でも少しはすごいものだ.街を歩けば偉大な人物などあちこちにいる.自分にできないことをやってのけることがすごいの定義なら,多くの人ができないことを仕事にしている人はみなすごい人物だ.あるいは人間性のある人物はみな偉大だ.人間性とはつまり清さや素直さだけでなくて,暗部もしっかり持って失敗を重ねることも厭わず,何度悖っても元に帰ってくる人だ.
なんとなく現代人は,一芸に秀でていなければとか,すごく得意なことがなくてはとか,好きなことを持っていなくてはと観念する人が多い気がする.それはそうだけど,偉大な人物になることよりも感謝できる人物になれたら,本当にすごい人に出会える.すごい人になるにはまずありがとうと言われる人物になる.感謝されない偉人は存在しない.有名や資産はその後に付いてくる,いずれも厄介なものだけど.

コメントを残す