35歳とは人生の中盤の開始点であろう.平均的な収入とまとまった資産を持つことができ,自分の好きな職業に転職した後も,仕事はうまくいっている.仕事上の悩みもあれど,職能をもっと増進する要請に従って,本を購読し講習会に参加する.生活で困ったことも特になく,この安穏が続けられるように諸々配慮しておく.人生で思い残すことはないと思うこともしばしばで,メメントモリを胸に刻んでいる.
このような描像が誰もに当てはまるわけではないだろうけど,35歳の姿として自然だと思う.人生にある程度疲れ,ある程度満足を覚えたが故に悩むのだが,この先の長い老いを何をどのくらいやって生きていくかがどこからともなく迫って来る.もう何もすることがなく満足だ,そういう生き方も選べる.でも,もっと張り合いのある秀でた生き方を選んだって全然遅くない.
もっともっとという思いは欲であり,抑えつけたほうが煩いが減り幸せになれるという見方も確かにある.もっともっとと社会に求める人も多数派ではなく,それは今に限った話ではないらしい.慎ましく謙って生きる善さだってとてもある.何かを成し遂げたい人にとっては,欲を抑えたり謙虚に生きることは,つまらない生き方に映るかもしれない.けれど,人間は文化や流行だけでなく,社会を支える多くの仕事によって維持されている.
私は今から後30年ほどウェブプログラマの職責を全うするため,より多くの技術知識を獲得し続ける道を選ぶ.努力が必要な生き方.楽しめるので苦ではない.でも,もっともっとという社会の一隅からの要求を真に受けず,休息と怠惰を生き方の基礎に据えたいのだ.ウェブプログラミングは,私の人生で最も重要な仕事である.新技術を短時間で習得したい欲を直し,少しでいいので研鑽より生活を優先できたらと考えている.

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