私に技術はない.そう考えたほうが良いことはある.今の実力を低く見ないと,先に高く積めなくなる.積んだ塔が充分高いと満足していては,塔が壊れたとき更地になるだけ.常に磨いたり取り替えたりしてメンテナンスしなければ長くは持たない.技術に手入れをするとは,今の実力で作れるより少し難しい課題や本に挑戦することだ.新しい問題に挑戦しなくなったとき,塔は古びることになり,しばしば復元できないほど寂れる.
この状況を回避するには,私の持ち物は大したものではないと思うのがいい.大したものも作ってきたけど,大した貢献はしておらず,自分の力でなくチームの力で成したことだから,自分には大した技術はないと思うことだ.チームは,達成に必要な貢献や力を分散させ,ひとりひとりが謙虚になるためにある.チームの認識論的解消である.誰かのおかげで今があると捉えることは,自分の力で獲得した今より良い今だ.
私には技術がない.誰かのために役立ったことはあるけど,自分の作りたいものを作れたことはまだない.だから私にはもっと技術がいる.そう考えては吃るのである.どのような技術がいつまでに必要で,なんのために必要で,どうやって学ぶか.そうやって決めていけば先に進む.人間の推進力は常に疑問である.だからどんどん自分に問いかけ,繰り返し,習慣にすれば,ものすごい量の努力がスピーディに達成できる.
問いかけは,いつも楽しいとは限らない.疑問に対する仮説が間違っていれば,時間も資源も無駄にした気持ちになる.効率的に達成したら,削がれた部分に目が行く.締切を過ぎそうなら,焦って事を仕損じる.でも,それらの思考は無駄にならないし,身に付くし,重要な仕事になっている.問いかける前とは違っている.私には技術がない.そう考える時間も無駄ではない.休息ということである.

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