バッハのゴールドベルク変奏曲を聴いている.抽象的な概念や形状が次々浮いてくる.階段や部屋を仕切る壁や窓を次々駆け上がっていく想念,或いは自然の森の中を走っていく少年が遊具を手に街や原っぱを駆け遊んでいく様子らが,次々流れ続く.抽象的なものが流れるというだけで,実に多くのイメージと癒着結合できるようである.
きょう職場は新年度組織で出発する日だった.管掌するウェブサイトが増えそうな予感だし,ウェブ業務以外からは外れ肩の荷が下り,文章の校正を行う人員が増えて仕事は円滑に流れると期待している.プロボノとして1件ウェブサイトを作成する活動が佳境を迎え,ランディングページの公開運用が昨日から始まっている.昔作った独自の装飾を採用し,雰囲気も合っている.
結局ウェブ制作は変奏曲の性質を持っている.同じ主題をこれでもかと繰り返す中で,同じものなどなく,でも総合では主題が反復し,リズムや景色を生む.どのウェブページも共通するデザインに対し,繰り返される部品の働きがサイト全体に旋律的な印象を兼ね備えさせ,オブジェクトをクリックしていくと音楽が流れるような体験を得る.全体を回った満足感が拍手を喝采させる.
バッハから学ぶに,物事の制作には秩序が大事なのだ.主題の反復から変奏を構成し,逸脱しすぎない冗長簡潔な展開から収束にかけてのスピードが,疾走感を定義する.ウェブサイトを訪問し終えるまでの感想が,何か音楽の感想に似た語彙で語られるのをあまり聞いたことないけど,どこか同じく共有する点があり,分有する面もあるはずで.作品の分野を跨いで比較する私益を見出す.

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